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【道徳という名の少年】 桜庭一樹

道徳という名の少年道徳という名の少年
(2010/05/11)
桜庭 一樹

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熱烈に好きな作家桜庭一樹さんの2010年度作品。
1作品、20ページ程度の連作短編5つから成立する、合計でも120ページ余りの作品集。

だけれども、この濃密極まりない世界観といったら何だろう!?まずコトの始まりからして濃密だ。
【1、2、3、悠久】町で一番の美女が父親不明の女児を産み落とす。その女児は、1と名付けられた。

町の人々は、父親の面影を女児に見出だそうとするが、母親に生き写しの女児からは、何の推測も出来ない。
恐る恐る、美女に父親を尋ねるが、『死んだわ!』と呟かれるだけで、

人々は最近の内に死去した亡者探しに奔走するのだが。一番手近な葬式は善人だった
町長が百歳で大往生を遂げたのみ。彼が果たして不道徳な営みに関わったか?

町中で、なにかの間違いだろうと言い聞かせている間にも再び美女は女児を授かる。
2と命名された赤子へも、インディオの召使から父について聞かれるが、美女は黒い巻き毛を揺らして

『あんまり若くて、言えないわ!』言い放つのみ。今度は町の学校が恐慌状態となる。
罪深い不道徳な少年を探して噂が駆けめぐった。だが。町民たちの疑心暗鬼の念など関係なく、

美女はまた腹を膨らませ、女児3を産み落とし、やはり、この児も母親瓜二つだった。
此処まで至ると、最早誰も、父親について聞いてくれとは頼まなかった。

秩序が壊れ始めていたから。倫理観などとは別次元に生きた美女は懲りずに末娘を産み、
こんどは、悠久と名付けた。挙げ句、美女は娘たちを棄てて、旅の商人と手を取り合って町から消えた。

なんとドラマチックな展開を思い付くのだろう!?冒頭に過ぎないページ数を読むだけで幾度となく嘆息した。
そんな気持ちも束の間。襲いかかる様に次なる衝撃的筋書きが!!

悠久が母親と同じ因果な原因(父親違いの弟との間に授かった)を背負い、
薔薇の如く美しい男の児を出産したのだ。彼女が、姉たちと4人して血縁に抗うべき名前として選んだのが、

『道徳・ジャングリン』シニカルな描写だなあ、と興奮しつつ次の章へ、次の章へと、
ページを捲ったのだった。数奇なる運命に生きるジャングリンの名前とは正反対の、不道徳な、

薔薇のような日々の描かれ方には、上質な海外文学を読んでいる様な極上の読書時間を、体験させてもらった。
印象的な言葉として『孤独な人間というものは、得てして、道徳を軽視するものだ』という一文が

深く胸に刻まれた。桜庭さんの大傑作【赤朽葉家の伝説】とも違う味わいの、
一族の物語を是非、御堪能下さいませ!!あ、それ物語に迫力を増加させてる挿画も素晴らしいですよ!

◎過去書評にも気軽にコメント下さいませ。一冊の本について話が交わせる事を嬉しく思います◎

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