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【罪と罰】 ドストエフスキー

罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)
(2008/10/09)
フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー

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憎みきれないロクデナシ。主人公ラスコーリニコフに対する感慨である。と同時に、
『この時代のロシアに現代の精神科医療があったなら

(こんな事件も起きずラスコーリニコフの熱病も無事解決、全ては円満に肩が着いたのでは?)
とまで考えてしまう。』絶望的な貧困を前に、学費を滞納し、遂には、

法律科の学生という輝かしい立場から転落してしまったラスコーリニコフ。
以来、友人ラズミーヒンからの家庭教師の仕事の斡旋も断り続け、

日がな1日アパートの屋根裏部屋にある薄暗い自室に籠って寝てばかりいる。
加えて、自暴自棄になっているもんだから、考えから正気は失われがちで、

絶えず荒んだ精神の中に身を置き、玉に意識が明瞭な状態に戻ったかと思えば、
自己嫌悪の念にきつく縛られているのだ。そんな風に自身も喰うや喰わずの日々を過ごしてると言うのに、

場末の酒場で知り合ったアル中の元役人マルメラードフ一家の自分よりも困窮している
有り様を目の当たりにすると、なけなしの小銭(金貸し老婆に買い叩かれた質草の代金、勿論生活資金)

を置いてきてやったりするのだ。他の誰よりも世界を呪ってる男が、
実は小心者で優しい心も持ち合わせ損ばっかりしてるのも妙な話だと思う。

肝心の金貸し老婆アリョーナを殺す計画も、街中で、
たまたま耳にした先進派学生の会話が引き金となったに過ぎない

『どう思う、ひとつのちっぽけな犯罪は、何千という立派な行いでもって償えないもんかね。
たったひとつの命とひきかえに、何千という命を腐敗や崩壊から救えるんだぜ。ひとつの死と、

百の命をとりかえっこするんだ。』この考え方には大変な衝撃を受けた!
殺人を堂々と正当化する思想がまかり通っていた帝政ロシア末期の世論。

それをハッキリと言語化してみせるドストエフスキーの筆の冴えを、自分の言葉を持たない、
現代日本の評論家やコメンテーターに、少しで良いから学習して欲しいもんだな、と感じた。


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