スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【麦ふみクーツェ】 いしいしんじ

麦ふみクーツェ (新潮文庫)麦ふみクーツェ (新潮文庫)
(2005/07)
いしい しんじ

商品詳細を見る


いしいしんじさんの書く物語りが好きだ。これぞ人生。これこそ、まさしく世界。
そういった悲喜こもごもが刻名に記してあるから。最終的に、この世界って奴も満更悪くはないんじゃあないか、

そう思えるのだ。『ねこ』という名前で呼ばれている少年が主人公の話には、
終始音楽がテンポ良くリズムを刻みながら流れて行く。トン・タタン・トン。

ねこ少年の耳の中には麦をふむクーツェの不思議な足音と、詩のように語りかけてくる言葉とが聞こえている。
頭の中には黄色い大地も見えている。少年は、学校の誰よりも、背丈がひょろり大きく、

その代わり生まれつき心臓が弱い。家族は、彼にねこの鳴き声を出すよう仕込んだ吹奏楽の王様、
打楽器奏者の祖父と、ねこ少年の学校の教師をする傍らで、数学の論文に打ち込む父との二人だ。

一家が港町に越して来た所から物語りは始まる。ねこ少年がはじめてクーツェにあったのは小学校に入ってすぐ。
真夏のむしあつい晩。とん、たたん、とん。音は光と一緒に窓の方から真っ直ぐにやって来た。少年のうちの玄関

先に、へんてこな身なりの人がいて足元の土を踏んでいる。幅広い麦わら帽子、シャツ、ぶかぶかのズボン、
そのどれもが土とおんなじ黄色。ただし靴だけが違う。やたら大きくて横幅のあるその革靴だけは

裏返したように黒い。それから、少年と麦ふみクーツェ、二人だけの幻想的な交流が始まる。
のちに街をおそった災難、ねこにスクラップブックを託す事となる用務員さんの事故。

吹奏楽に関わりながら様々な人生の機微を学んでいくねこ少年。そして彼は中学を卒業し、
故郷の街を離れ音楽の専門学校へ入学する事となる。が、凝り固まった机上の空論のような音楽教育と、

彼の風体を嘲笑う学校に、ねこ少年は早々とサボタージュを決め込んでしまう。
けれど人生、そうそう悪い流ればかり来ない。時計だらけの街の中でも部屋から時計を外し、

代わりに部屋中油絵で埋め尽くす煮込み料理が絶品なおばさんや、
何と言っても図書館で出会った盲目のボクサー、ちょうちょのおじさん。

こういった暖かな視線でねこ少年を見守る人々から受け取る心の栄養分が
更に少年を成長させ運命の歯車を回転させていく事となる。故郷の港町に襲い掛かった大掛かりなサギ事件と、

それに伴うねこ少年の父親『ねずみ男』の悲劇的な死。
サギ師とねずみ男の二人を結び付けた国際的な懸賞金付きの論文。

悪行の報いかサギ師も謎の多い死に様を遂げていたので、自然と懸賞金は数学者ねずみ男の遺児である、
少年の懐に転がり込んで来ます。ねこはサギにより楽器を消失した吹奏楽団に、

新しい楽器を購入する様に言いますが、楽団員はねこに、世界的な盲目チェリスト
(ちょうちょおじさんの友人でもある)の所に学びに行くように勧めるのです。

ここら辺の描写、実に読み応えありで胸が熱くなりました。本当に素晴らしい!
チェリストの先生の、一見授業と思えない、けれど、ねこの全身全霊を音楽へと変えていく教え方の魅力。

そしていよいよ長い道程の果て、一人の指揮者として舞台に上るねこ。数奇な人生を送った少年だからこそ、
音楽にも美しさと、味わい深い響きがある。盛大な拍手を贈りたいと思います。

そうそう、最後の最期にクーツェの謎が明らかになりますが、
この種明かしも良いですよ。トン・タタン・トン。

◎過去書評にも気軽にコメント下さいませ。一冊の本について話が交わせる事を嬉しく思います◎

にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ読んで気に入って下さったら応援宜しくお願い致します!励みにして書き続けます。

【SNS 本カフェについて】親愛なる皆様へ
「本カフェ」は、本好きさんが集まるSNS読了本、お譲りします!もOPEN!!!
↑ご希望の方は『新規登録』をクリックし会員登録を行なって下さい。

テーマ : オススメ本
ジャンル : 小説・文学

コメント

Secret

SNS「本カフェ」参加中!

ランキングに参加しています!

にほんブログ村 小説ブログ エッセイスト志望へ

プロフィール

花房雨

Author:花房雨
藤長聖子です。

皆様、お友達になって下さいね。お声かけてくれたら嬉しいです。
初めてこのブログを読まれる方は、こちらから読まれてくださいね。

【ラブ&シェアについて】親愛なる皆様へ

【藤長聖子のプロフィール】

≪O型・おひつじ座≫≪1979・3・26生まれ≫≪持病・バセドウ氏病≫

≪好きな人たち↓≫

作家:よしもとばなな・吉本隆明・田口ランディ・西原理恵子・角田光代・山崎ナオコーラ 音楽:THE BLUE HEARTS・大貫妙子・松任谷由実・池田綾子・S.E.N.S 画家:デナリ・ダリ・シャガール・バスキア 映画:アマデウス・サイダーハウス・ルール・ハリーとトント・めがね・ビリー・ワイルダー 落語:立川談春

福岡県在住・紅茶と猫と読書・イラスト描くこと・文章・詩を書くのが好きです☆

◎このブログ・私たちは著作権を放棄しておりません◎

イラスト等を使用されたい場合はメールにてご連絡下さいませ♪

love_heartgraffiti★yahoo.co.jp ★を@に変えてご連絡下さい。

※あきらかに当ブログと関係のないと思われるコメント・TBや『これはひどいなぁ』と行き過ぎを感じさせるコメント・TBは削除させて頂く場合があります。ご了承下さいませ。

メールお待ちしています☆

名前:
メール:
件名:
本文:

HEARTGRAFFITIのすべて

ご訪問ありがとう!

☆検索☆

ジーナフウガの一冊入魂レビュー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。