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【家守綺譚】 梨木香歩 ~花鳥風月と暮らす庭~

家守綺譚家守綺譚
(2004/01)
梨木 香歩

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家はそこに暮らす人の気配を失うと、途端に朽ち果てて腐ってしまう。
その為、駆け出し文筆家綿貫征四郎は、今は亡き親友、高堂の父より、

現在住み手の居ない家と庭の守する職を得る。
と、綿貫の書き記す私小説の様な案配で語られ出す物語。

日課の様に庭のサルスベリを撫でる内に、知らぬ間にサルスベリより懸想され、弱っている所を、
掛軸に描かれた池から、ボートに乗ってやって来たのは逝ってしまったはずの友人・高堂。

事も無げに「百日紅は話し好きなやつだから、たまに本でも読んでやることだな。」等とのたまう。
面白いのが、私の本を読み聞かせてみると、百日紅が身悶えして喜び、

「腐らずに細々とでも続けるように」と、云ってくれている点。日常から、
ほんの少しだけ遊離した世界や物事の存在を、飄々と自然に有る物として、共存する姿がとても良い。

征四郎に懐いた犬のゴローが、迷子になって干からびている河童を無事に住み処の滝壺まで送り届けたり、
そんなゴローを隣家の犬好きのおかみさんが温かな心で見守ってくれているのも、
実にしみじみと味わい深く思える。

他にも、この本独特の素晴らしさとして、周囲に咲く植物の描写が詳しく写実的なので、
植物の名前を余り知らない人間でも安心して物語に入って行ける所があると思う。

庭に落ちた雷。それ故、蕾に雷の子種を授かり、
タツノオトシゴを身籠った白木蓮の花。確かに言われてみれば、曇天を切り裂いて光る稲妻に、

龍の姿はとても良く似合うから、雷の子どもとして、タツノオトシゴが出産される、
という発想はなる程面白いアイデアだなと思った。綿貫が売文業で中々芽が出ず、

日々を切り盛りする能力が、人並み以下であることから、世知に明るいであろう長虫屋に、
要らざる劣等感を抱いてしまう箇所等も、あぁ、そんな物かも知れない、と妙に納得してしまった。

綿貫という男が己を飾ることなく、赤裸々に思いの丈を吐露するタイプの人間だからなのだろう。

植物それぞれと向き合っていく姿を淡々と描いているこの物語には、
何とも形容し難い独特の風合いと魅力とが兼ね備わっている。

池に姿を現した人魚を外敵であるサギの襲来から守ろうと、
池全体に網で覆いを掛けようとするものね中々思うに任せなかったりで。

一人じりじりしている所を、後輩の編集者、山内に見つかり、
池を覆える位大きなネットを調達してくるのと、交換条件として、

原稿を早く仕上げるよう催促される始末で。愛すべき無能者っぷりが、
反って天然自然の植物達に愛され、また周囲からも、

放って置けぬ存在として認知されるのだろうとすら思える。
どうやら死んだ高堂も綿貫という男の事が気がかりなのだろう。

山歩きをして、そのまま野宿したがる綿貫に
「いい場所とはつまり、人が埋められる気分になる場所なのだよ。」

諭しに現れる。二人の関係に湿った所がなく、相手が死んでいようがいまいが、
変わらない適度な距離感を保っている所に、交友の深さを感じる。実に珍しい友情関係だと思う。

人の世を放擲したという高堂と、人の世の行く末を確かめてみたいという綿貫の、
二人だからこそ分かりうる、終始変わらぬ関係の厳しさに若干の羨ましさすら覚えた。

日本ならではな、風土に愛着を持つ事が出来る、心穏やかな読書時間を楽しめる傑作です!!

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テーマ : オススメ本
ジャンル : 小説・文学

コメント

No title

この本のもつ雰囲気というのが大好きで、
あー、梨木香歩という作家にめぐりあえて
本当によかったと思わせてくれた一冊です。
曖昧模糊とした部分の心地よさ、
ずっと味わっていたい世界ですね。

コメントありがとうございます。

mizutani.ryomaさん、コメントありがとうございます。

梨木さんの作品には、日記文学と幻想文学とが共存しているのが、凄いなと思わされます。


余韻が残る文学ですよね(^_^)。

No title

SNSにてお世話になっております。

この本で初めて梨木香歩を知りましたが、
怪異が当たり前のように起こり、
それが切なかったりユーモラスだったりする
情緒的なファンタジーは、
聊斎志異に近い感じを受けました。

関連作品の「村田エフェンディ滞土録」も好きでしたよ。

コメントありがとうございます。

瑞閏さん、コメントありがとうございます。
そうですね、少し前の日本では怪異が日常的に起こり、人間側も、ごく普通に異界の存在を受け止めていたのでは、と思わせるだけの筆力がある梨木さんの世界観が好きです。

関連作品も面白そうですね、教えて下さり、ありがとうございます。

No title

こちらでははじめましてです!
本カフェでお世話になっています、伊織です。
私もこの本読みました~^^
慣れるまでは読み辛くもあったんですが、それよりも先が気になる、気になる!であっと言う間に読んだ記憶があります。
まさに傑作だと思います。

またチョコチョコ遊びに来ま~す!
今日はこの辺りで失礼します♪

コメントありがとうございます。

伊織さんへ

確かになんか不思議に引っ張られる様な魅力がありますよね。

それこそ傑作なんでしょうね。

また時間のある際にでも読みに来てやって下さいね。
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福岡県在住・紅茶と猫と読書・イラスト描くこと・文章・詩を書くのが好きです☆

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