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【八日目の蝉】 角田光代

八日目の蝉八日目の蝉
(2007/03)
角田 光代

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0章、1章、2章で、構成されている。とにかく、この0章が持つ、切なさに胸を打たれた。
冒頭からして、『ドアノブをつかむ。氷を握ったように冷たい。

その冷たさが、もう後戻りできないと告げているみたいに思えた。』と、こうだ。
「何か分からないけれど、物凄い展開が迫ってくるぞ!」という緊張感を、自然、読み手に、

もたらすではないか!?しかも、この0章に、過去は主人公・希和子の記憶の中にしかないので、
果たして何故、彼女は『がらんどう』と罵られるまでになったか?

理由は、こちらが、推測で補うより他は無い。希和子に平気で酷い言葉を投げつける事の
出来る夫婦は、しかし、電熱ストーブ点けっぱなしの部屋に鍵も掛けず、

その中に我が娘を放ったらかしのまま、平然と出掛けて行く。
どう贔屓目にみてもロクな大人だとは思えない。この人達を的確に描写しているからこそ、

不法侵入という立派な犯罪行為を犯している希和子に、さしたる反発も覚えず、
スーッと彼女の心情や葛藤と、同調出来るまでになっていくのではないかと感じ、

角田光代さんの巧さに舌を巻いた!特に、希和子が、赤ん坊を目の前にしてからの、
内的変化、芽生え始める『絶対的な母性愛』この2点を鬼気迫る筆致で浮かび上がらせ、

圧倒的なリアリティーを持たせるのに成功している。背中に寒気が走りました!!
そして第1章、赤子を連れての逃亡劇が始まる訳ですが…。

母親になるべく、自分が子供を授かったら、男としても女としても、
通じる名前として、名付けようと考えていた『薫』と命名し、許されざる母と娘、

2人は日々を生き抜きます。この0章にせよ、1章にせよ、生き抜く為とは言え、根底に、
嘘や秘密などと呼ばれる負の感情に、加えて悲しい気配や違和感が漂います。

最初に希和子が身を寄せる友人宅でも、『康枝は、やさしくて正しい環境にいつだっているから、
やさしくて正しいんだと思った。』表面上、普通に接している、内面では、

自分が世間との間に覚えているズレや違和感は常に希和子の傍に在ります。
ズレが沸点に達する度、居場所を変え、必死に逃げよう、逃げ延びようとする希和子。

時には、宗教施設にも身を隠します。その度毎に、余計に『薫』に向ける愛情は色濃く、
切なさを増します。すくすくと育って行く薫との、母娘としての1日1日。絆は強く深まります。

読み進める内に、『あぁ、もう良いじゃないか!このまま無事に過ごさせてやれたらよいのに。』
祈りにも似た思いを感じてしまいました。

けれど、やっとの事で違和感が薄まりつつあった暮らしにも終焉の時が…。
何気ない日常の、文字通り何気ないひとこまがきっかけ。逮捕の場面では溜め息が零れました。

2章『薫』から、本名に戻った少女からの視点で物語の謎は少しずつ、少しずつ、
まるで霧が晴れていく時の速度で明らかにされていきます。憎しみも愛情も、全てが、

日の光に照らされ、ゆっくりと溶けていく。
最後の最期、ずっと長い歳月『薫』が忘れていた希和子との別れの(逮捕)の瞬間を

思い出すシーンには涙が出ました。だからと言って、この物語を『産みの親より育ての親』や
『血よりも濃い絆がある』って単純に容認する気はないです。

が、この小説には、『どうすれば自分の力で本物の愛を手に出来るか』記されていると思います。
ご一読の程、お薦め致します。

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テーマ : オススメ本
ジャンル : 小説・文学

コメント

はじめまして

はじめまして(^-^)とは言っても、お名前はbk1でもたびたび拝見しておりました。書評の鉄人おめでとうございます。私も先日選んでいただいたばかりですが、嬉しいことですよね。

さて、この「八日目の蝉」。角田さんの本の中で今のところ一番好きな本です。
普通なら知らずにすんだ「八日目」をどう捉え、どう生きるか。などなど…読んだ時は、じんわりといろいろなことを考えました。

コメントありがとうございます。

こんにちは、桔梗さん
コメント頂きうれしく思います。

bk1さんが取り持つ縁で、書評家の皆さんとこうやって会話が出来る。

本当にありがたいな、と感じております。
》普通なら知らずにすんだ「八日目」をどう捉え、どう生きるか。

1章の重さ、切迫感に満ちた内容に触れた時は正直、『えぇ!?どうして、そこまで変わっちゃったの角田さん?』って面食らいました。

が、「八日目」に再生の祈りを織り込んだ文章に、作家・角田光代の進化と深化を見た思いがしています。

読み手の人生観をも揺さぶる名著ですね。
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花房雨

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藤長聖子です。

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≪O型・おひつじ座≫≪1979・3・26生まれ≫≪持病・バセドウ氏病≫

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作家:よしもとばなな・吉本隆明・田口ランディ・西原理恵子・角田光代・山崎ナオコーラ 音楽:THE BLUE HEARTS・大貫妙子・松任谷由実・池田綾子・S.E.N.S 画家:デナリ・ダリ・シャガール・バスキア 映画:アマデウス・サイダーハウス・ルール・ハリーとトント・めがね・ビリー・ワイルダー 落語:立川談春

福岡県在住・紅茶と猫と読書・イラスト描くこと・文章・詩を書くのが好きです☆

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