スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

舟を編む 通常版 [DVD]

舟を編む 通常版 [DVD]舟を編む 通常版 [DVD]
(2013/11/08)
松田龍平、宮崎あおい 他

商品詳細を見る
映画《舟を編む》レビュー

いやはや!実に味わい深い日本映画が観られて感動しております。

ヒロインの宮﨑あおいさんが超絶可愛いのは言うまでもなく。

主人公・馬締=まじめ君を演じた松田龍平くんの辞書創りに費やした十五年の歳月の演じ分けが絶品です!青年期の気弱で生真面目過ぎておどおどした演技、中年になり主任として後進の指導に自信を持って臨む大きな演技。何れ甲乙つけ難く、松田家の遺伝子恐るべしと思った次第です。

脇を固める役者さんの演技も素晴らしかった。真っ先に挙げたいのが、馬締君の下宿の、大家さんを演じたおばあちゃん俳優の方。馬締君の良い所を指摘し、励ましてくれる温かさは古き良き日本人そのものでした。

それから、辞書編集主幹の加藤剛さん、加藤さんをサポートする役割の小林薫さんの熱演も。日本語を愛し、『大渡海』に掲載する言葉を、何処までも鮮度の良い意味と解釈で乗せようと奮戦する姿に、良い意味での学者気質を感じました。

オダギリジョーさんもチャラさの奥に情熱を持ってる宣伝部員で、馬締君との凸凹コンビっぷり堪らなかったなぁ。

最大の見せ場ロマンスシーン。宮﨑あおいさんが演じる『かぐや』の女心に、不器用ながらも最後にはきちんと勇気を出して告白する男の純情に大拍手を!!

日本語の海を渡る辞書・大渡海。海を漕ぎ行く舟を編む。

さてと、あなたならば『ダサい』の解釈、例文をどのように作成しますか?




←皆様の応援が励みになります。
スポンサーサイト

【神去なあなあ日常】 三浦しをん

神去なあなあ日常神去なあなあ日常
(2009/05/15)
三浦 しをん

商品詳細を見る


物語の書き出しから、もう、神去(かむさり)の村が、
どういった場所かと想像力を掻き立てられるところに作家・三浦しをんさんの筆の冴えを感じる。

肩の力を抜いて、安心して小説の流れに身を任せられる、それだけ信頼を置ける作家さんは、そうはいない。
よって。僕にとって三浦作品を読むことは、至福の読書時間を過ごせることを意味する。

今回も又、抜群の発想で造り上げられた物語世界が存分に楽しめた。
高校の担任が、主人公に内緒で、勝手に申し込んだ『緑の雇用』制度。

それで成り行きから『林業研修生』として、三重県の、携帯も圏外の僻地、神去村まで、
派遣されることになったのだから、設定からして、笑わせてくれる。

加えて、主人公が神去村での生活を表も裏も包み隠さず、記録する形で、
語りかけてくる告白体の文章形式が、斬新で面白い。主人公・平野勇気くんを出迎えたのは、

『ケータイ』の電池を『どうせ圏外や必要ないやろ』との、己に都合良い理由で、
いきなり沢に投げ捨てる野生児ヨキ。けれど林業の天才、空っ惚けた『なあなあ』な性格の持ち主でもある男だ。

肝心の勇気の職場。林業会社・中村林業の面々も、バラエティー豊かな顔触れだ。
『おやかたさん』と村の衆から慕われている、遣り手若社長清一さん。

教え方が荒くて厳しいヨキの代役で勇気の教育係を務めることに相成った巌さん
(子どもの頃、山の神様に認められて特別な体験をしている)。

飄々と惚けてるがいまだバリバリの現役な山男三郎じいさん。全員が、山仕事は仕事じゃなく、
生きかたそのものです、って感じなのがカッコいい。最初は神去村からの脱走を企てたりしていた勇気だったが、

山仕事のいろはから身に付けていく内に、林業仕事に誇りを持つまで成長していくのも面白い。
だが、現実では嫌な事もある。僻地な上、長年、顔見知りのみで住み暮らしていた神去村。

最初、勇気をよそ者扱いし邪険にする。が、ある事件の起きた時、
名前に負けない勇気を見せて大活躍した勇気を、徐々にではあるが、

神去村の一員として認めようとする。それもこれも、神去山の神様の威厳を、
住民全員が信仰し畏れ敬う念が、色濃く息づいているからだろう。クライマックスとなる、

オオヤマヅミの神に捧げる大祭の描写は圧巻の一言!それにしても三浦さんは、
作中人物の暮らす環境や立場の違いなどから来る心理状況を描き分けるのが上手だなぁ、と思いました!!

あ、蛇足ですが、勇気が惚れた女性含め、おかみさん達(山の神って言いますね)
の凛々しさも読後感を爽快な物にしてくれています。青春小説の大傑作をオススメ致します!!

◎過去書評にも気軽にコメント下さいませ。一冊の本について話が交わせる事を嬉しく思います◎

にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ読んで気に入って下さったら応援宜しくお願い致します!励みにして書き続けます。

【SNS 本カフェについて】親愛なる皆様へ
「本カフェ」は、本好きさんが集まるSNS
↑ご希望の方は『新規登録はこちら』をクリックし会員登録を行なって下さい。

テーマ : オススメ本
ジャンル : 小説・文学

【むかしのはなし】 三浦しをん

むかしのはなし (幻冬舎文庫)むかしのはなし (幻冬舎文庫)
(2008/02)
三浦 しをん

商品詳細を見る


限りなく壮大な試みに挑戦した作品集である。昔話を現代社会に採り入れて作品を展開させたら、
語り手や聴き手は果たしてどの様な存在になるのが相応しいかというテーマに真正面から取り組んでいる。

決して安易なパロディーに走らず、今の社会の取り立てて大きくはない日常から非日常性が立ち上がるのを
目を凝らして観察した結果が、収録されている七つの中・短編小説として昇華されているのではないかと思う。

冒頭に記された言葉も頁を捲るに連れ、加速度的に印象が強くなる。ここに引用したい。
『わたしを記憶するひとはだれもいない。わたし自身さえ、わたしのことを忘れてしまった。

胸のうちに、語り伝えよという声のみが響く。これはたぶん、思い出のようなもの。
あとはただ、ゆっくりと忘れ去られていくだけの。』

現在が過去に、それより遥かに時が経ち、風化して、我々現代人も
『むかしむかし』と語られるような日が来るのだろうか?想像してみると、

なんだかじんわり楽しいではないか…。改めて、書き手としての三浦しをんさんの手腕には脱帽する。
更に中盤に収録されている【入江は緑】から、当初は一つ、一つの小説が個別に独立しているかの様に

思わせられていた、作品同士が、実は微妙な相互関係の下繋がっていた事に気付かされ、とても驚いた!
『地球は三ヶ月後に衝突する隕石によって滅亡する。だから木星までロケットに乗って脱出する人類を、

都合、一千万人抽選する。当選者番号は随時ニュースで発表される。』特にヤラレタ!と
思ったのは冴えない空き巣が刑事相手の調書に応えているだけだと思っていた、【ロケットの思い出】と、

【たどりつくまで】に登場する、怪しげなタクシーの乗客との接点に気付いた瞬間だ。
これ以上いうとネタバレになるから言わないが、この伏線の回収以外にも様々な仕掛けが用意されているので

是非とも探される事をオススメする。それにしても。一千万人を木星に運ぶのには何回ロケットを
飛ばさなくちゃいけないのだろう?なんて事を本編中唯一の中編

【懐かしき川べりの町の物語せよ】を読みながら思った。作中の主人公で伝説の不良モモちゃんは、
あっさりとロケットに乗ろうとするあがきは捨て『死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか』と

滅亡する運命に従ったのだ。だが。モモちゃんとの、ある夏の日は語り手が居る以上、
永遠の物語りとして聴き手に受け継がれてゆく。三浦しをん作の、傑作昔話の誕生だ。

小さな頃、【桃太郎】や【浦島太郎】を語り聴かされた時の様な胸のときめきを持って読んでもらいたい。
最良の読書時間をお約束致します。

◎過去書評にも気軽にコメント下さいませ。一冊の本について話が交わせる事を嬉しく思います◎

にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ読んで気に入って下さったら応援宜しくお願い致します!励みにして書き続けます。

【SNS 本カフェについて】親愛なる皆様へ
「本カフェ」は、本好きさんが集まるSNS読了本、お譲りします!もOPEN!!!
↑ご希望の方は『新規登録』をクリックし会員登録を行なって下さい。

テーマ : オススメ本
ジャンル : 小説・文学

【まほろ駅前番外地】 三浦しをん

まほろ駅前番外地まほろ駅前番外地
(2009/10)
三浦 しをん

商品詳細を見る


あの凸凹コンビ、多田と行天の『多田便利軒』が帰ってきた!
愛すべき『まほろ』市民から寄せられる諸々の依頼の間を縫うように、更にタフにしなやかになって!!

雨降り続きで、依頼主の方も依頼を控えるような時期。
それでも、わざわざ事務所を訪れた女性からの依頼は、女性ならではの、

ステイタスに関わる品物に関しての物だった。【光る石】前振りとして、
普段は酒を主食としている行天が、何故だか常に空腹を訴えているのがおかしい。

半ば力業で任務を遂行する姿に笑ってしまった。前作では、しばしば多田便利軒の前に現れ、
敵対する側として、危機的状況を創り出していたヤクザ者の星。

そんな彼の私生活周辺の話【星良一の優雅な日常】相変わらず多田の便利屋とは付かず離れずの関係でいるが、
星自身は、まほろの裏社会の新興勢力としての地位を、より確固たるものにしつつあった。

星のヤクザ者としての一日を追ったルポ的な一編は、優しさと暴力との相反する要素が
バランス良く配分されていて、筆者の三浦しをんさんの腕の冴えに唸った。

前作では、度々、多田への未来予想を的中させるという凄技を見せた『曽根田のばあちゃん』。
前作では呆けていたはずのばあちゃんの記憶の回線が繋がった時、恥ずかしそうに話し始めた『ろまんす』。

戦後間もない、まほろの町で出会った二人。まほろ小町と呼ばれた菊子と行天似の男(以下行天と呼称)。
そこに戦地に赴いたきり生死すら判らなかった多田似の幼馴染み、啓介(以下啓介と呼称)が復員兵として、

まほろに戻って来る。たちまち出来上がる奇妙な三角関係。
行天と啓介の間にも菊子を通しての友情が成立する。啓介の実家、

曽根田材木店から安く仕入れた木材を武器に、ヤクザの世界でのしあがる行天。
だが、その三角関係は長くは続かなかった…。ラスト、ばあちゃんの所から引き上げる行天と多田の会話に、

『袖すり合うも多生の縁』という言葉を思い出すと共に、便利屋が垣間見る人間模様について考えました。
【思い出の銀幕】傑作です!!多田と行天が再会を果たしたのも、このシリーズの名物的なキャラクター

『バスの運行が間引きされてないか、見張らせる』岡さん夫婦のお蔭なのだが、
最近岡さんのご主人のバスへの執着は常識を越えている。岡夫人は、ご主人の岡さんが、

余りに頻繁に便利屋を頼むことも悩み事の一つだ。なので【岡夫人は観察する】岡夫人の人柄だけではなく、
多田と行天の便利屋二人を、優しく、長い目で観察する姿、見る人は見ているんだなぁ、としみじみ。

前巻で、小学生にも関わらず闇社会が絡んだ危険なバイトをしていた『由良公』
彼が満喫しようとしていた土曜日のお休み。バスに乗っていた所、渋滞に巻き込まれてしまい、

運の悪い事にギョーテンに発見され、そこから次第にツキにも見放されていくというお話【由良公は運が悪い】
散々に、ユラコーを振り回してまでも、行天が向かいたくなかった場所とは果たして?

多田便利軒に遺品整理の依頼をして来たのは、洋食レストランのチェーン展開をしている、遣り手女社長だった。
遺品の持ち主は、二年前、『少し、一人で落ち着いて考えたいから』と妻である女社長に告げ

家を出た先代社長でもある社長の夫。彼が全力で逃げようとした物の正体とは一体?
【逃げる男】個人が誰しも持ちうる心の闇にググーッと焦点を当てた作品。考えさせられる事が大きかったです。

最後に所収の作品【なごりの月】正月は仕事も入らず、寝正月を決め込んでいた多田と行天。
そこへ年明け最初の仕事が飛び込んで来るのだが。

仕事内容は初めて行天の人格が崩壊してしまうような類いの物だった。
行天の抱える闇に眼を向け始めた多田。この凸凹コンビの絆は更に深くなった様な気がする。

更なる新刊を期待したくなる、そんなエンディングでした。
前作【まほろ駅前番外地】とセットでどうぞ!絶賛オススメ致します!!

◎過去書評にも気軽にコメント下さいませ。一冊の本について話が交わせる事を嬉しく思います◎

にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ読んで気に入って下さったら応援宜しくお願い致します!励みにして書き続けます。

【SNS 本カフェについて】親愛なる皆様へ
「本カフェ」は、本好きさんが集まるSNS読了本、お譲りします!もOPEN!!!
↑ご希望の方は『新規登録』をクリックし会員登録を行なって下さい。

テーマ : オススメ本
ジャンル : 小説・文学

【風が強く吹いている】 三浦しをん

風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)
(2009/06/27)
三浦 しをん

商品詳細を見る


この作品の前評判として、大学陸上の花形競技である『箱根駅伝』に陸上未経験者も込みで、
たった10人で挑戦すると言う、大まかな粗筋を聞いて、『果してどのようなメンバーが集まるのが?』

非常に興味深く思った。こんな、突拍子もない計画を立てたリーダーは四年の清瀬灰二(ハイジ)。
運命はハイジが偶然、万引き犯として走って来た走(かける)の天才的走力を目撃した事から始まる。

ハイジは自転車で走と並走し、自らの住むアパート、竹青荘(通称アオタケ)へと連れていく。
ハイジと走を含めアオタケの部屋数は九室、住人は全部で十名。駅伝を走るのに必要なギリギリのメンバーだ。

まずは城太郎と、城次郎の双子。縮めてジョータとジョージ。彼らがルームシェアをしてくれたお陰で、
駅伝に必要な頭数が揃ったことになる。火事と間違えられる程のニコチン中毒者が、ニコチャン先輩。

四年のハイジよりも上級生だったはずが、いつの間にか、下の学年になってしまったらしい。
その向かいの部屋に住んでいるのが三年の時点で既に司法試験に合格済みのユキ。

そして、自己鍛練を理由に風呂場の電気を消し入浴するのが、黒人留学生ムサ。
それから、クイズ番組を偏愛する様を揶揄して命名されたキング。キングと行動を共にするのが、

郷里の山奥で『神童』と呼ばれていたらしい神童。変わり者が揃ったアオタケの中でも、
極めつけに変人なのが、自室にうず高く積み上げた漫画の本と共に寝起きし、

走が越してきてから二週間たっても走の存在に気付かないで居た、通称『王子』。
ハイジは、住人全ての前で高らかに、『この十名で箱根駅伝に出場してみせる!』と宣言する。

驚愕するメンバーたちをよそ目に、あの手この手を使い分け、結局メンバー全員から
出場に向けての約束手形を取りつけてみせるのだから凄い!何より、この強烈な魅力を有した十名の存在感が、

圧倒的にリアルであるからこそ、気付けば読み手は、この破天荒とも言える筋書を、
手に汗握って応援する事が出来るのではないかと思う。そう、何よりメンバーの個人差

(走ることがいやでいやでたまらないらしい王子。)等のディテールが念入りに描かれているので、
自然と一人ずつ、メンバーへの愛着が沸くのだ。とは言え、箱根駅伝までの道程は長くて険しい。

何せ、ハイジと走以外は素人達の集まりなのだから。走は最初の記録会で高校時代のチームメイトから
『せいぜい仲良くかけっこしてろよ』と罵声を浴びせられたり、箱根駅伝三連覇中の大学のエース

(ハイジの過去を知っていそう)の走りに、王者の貫禄を見せ付けられたりで、自分の走りを見失ってしまう。
結果として、走の中にある鬱屈した速さのみを求める思いは苛立ちとなって、

アオタケの面々との喧嘩騒ぎを巻き起こす有り様だ。騒ぎの後、走はハイジから、
俺たちは、『強い』と称されることを誉れにして、毎日走るんだ。

と走者としてのターニング・ポイントとなる考え方を教えられる。
そしてチーム・アオタケは結束力を増し、夏を越えて駆けて行く。

このチームの伸び方は見ていて実に清々しい。箱根に向け、駅伝に向けて、
一致団結していく情熱に一点の濁りもないからだ。そして、遂に箱根駅伝本番の日を迎える。

十人で作りあげる巨大なレース、走たち十人のランナーは、どのようなレースを見せてくれるだろうか?
駅伝を走るランナーそれぞれの、息づかいや、各人の思惑等、

レースさながらの臨場感をタップリと味わって下さいませ!
正月の箱根駅伝に興味が出ることうけあいです!!

◎過去書評にも気軽にコメント下さいませ。一冊の本について話が交わせる事を嬉しく思います◎

にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ読んで気に入って下さったら応援宜しくお願い致します!励みにして書き続けます。

【SNS 本カフェについて】親愛なる皆様へ
「本カフェ」は、本好きさんが集まるSNS読了本、お譲りします!もOPEN!!!
↑ご希望の方は『新規登録』をクリックし会員登録を行なって下さい。

テーマ : オススメ本
ジャンル : 小説・文学

【まほろ駅前多田便利軒】 三浦しをん

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
(2009/01/09)
三浦 しをん

商品詳細を見る


凸凹コンビの活躍する作品は面白い!何故なら彼らの発する摩擦熱から人間の匂いがするからだ。
この作品もそうだった。神奈川県に間違われる東京の外れまほろ市が舞台。主役の多田はタイトル通り、

まほろの駅前で便利屋を営んでいる。舞い込んでくる依頼は様々で、正月に、
自宅前を走っているバスが運行表通りに、間引き運転をせず走っているかを延々見張らされたりもする。

そんな仕事を終わらせたある日の事、多田はバス停で不思議な男と再会を果たす。
男の名前は行天、高校時代は、とにかく言葉を発さないのを周囲に不気味がられてた奴。

もちろん多田と行天は友達なんかじゃなかったけれど、多田は行天が不慮の事故で
小指を切断する傷を負うハメになった時に初めて口にした『痛い』と言う言葉が忘れられないでいた。

幸い指は元通りに縫合されたのだけど…。久しぶりに会った行天は実に口数が多く、
厚かましさまでをも身に付けた、冴えない中年男となっていた。かくして訳在り

中年・凸凹コンビ便利屋稼業がスタートする、のだけれど。依頼主から塾からの迎えを仰せつかった
小学生の少年は、危険なバイトに手を染めてるわ、そのせいで便利屋なのに私立探偵並みに

ヤバい橋を渡らざるを得なくなるわ、のっけからピンチを迎える目に遭うのだ。
おまけに行天は意外にも腕力で物事を片付ける武闘派タイプだったもので、事態は中々穏便に進みはしない。

だが、この行天という男には不思議な愛嬌があり、どこか憎めないのだ。
多田も行天の行状に散々振り回され愚痴をこぼしながらも、彼が依頼主に好かれたり、

案外と役に立つ部分もある事を知るにつけ、内心では行天を必要としている自分が居る事に気付く。
2人の微妙な距離感、互いにベタつく事なく、それでもパートナー関係を保持している所が好きだ。

便利屋の仕事は嫌でも各家庭の様子を覗き見る事になる。
人間模様に対する2人の接し方の違いに面白さを感じた。

そして物語が進むにつれて明らかになる多田と行天の過去の傷。
傷というものは個人の考え方や行動に深い影を落とす。不器用な2人だけに、傷の深さ、

影の長さを隠し持つ意味の大きさが印象的だった。物語を単なる痛快ストーリーから、
グレードアップさせるのに成功している点だと思う。それにしても作者である三浦しをんさんは、

心理描写だけでなく、人間の真実の思いにスポットライトを当てて、
物語世界にリアリティーを持たせるのが上手い。今回も存分に堪能した。

自分の育った家庭に悩んでいる人、秘密に苦しみ続けている人にこそ、
読んで欲しい充実した内容の一冊です!!

◎過去書評にも気軽にコメント下さいませ。一冊の本について話が交わせる事を嬉しく思います◎

にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ読んで気に入って下さったら応援宜しくお願い致します!励みにして書き続けます。

【SNS 本カフェについて】親愛なる皆様へ
「本カフェ」は、本好きさんが集まるSNS読了本、お譲りします!もOPEN!!!
↑ご希望の方は『新規登録』をクリックし会員登録を行なって下さい。

テーマ : オススメ本
ジャンル : 小説・文学

【仏果を得ず】 三浦しをん ~いろはにほへとちりぬるを~

仏果を得ず仏果を得ず
(2007/11)
三浦 しをん

商品詳細を見る


作品毎に文体から作風まで変えてくる驚異の作家三浦しをんさんが、
伝統芸能【文楽】の世界に挑んだ!と聞き、強い関心を持った本。なんでこうも上手に、

ヘンテコな人ばかり生み出せるのだろう!主人公健太夫(たけるたゆう)の、相三味線、
つまりはパートナーとして選ばれた三味線の兎一郎兄さん。兎にも角にも、珍妙な性格の男なのである。

何せ健とは十年、ほとんど毎日顔を合わせているのに、挨拶以外は一度として話した事がないのだ。
いつもふらふらと楽屋からいなくなってしまい楽屋の食堂で、

五つぐらい並べたプリンをうまそうに食べているのだから。妙な噂も、枚挙にいとまがないし…。
それに頑固さも天下一品で三味線や太夫の長老連が口を酸っぱくして、健大夫と組む事を促しても、

自分が納得するまで、何編でも、真っ向から堂々と反論してみせるだけあって、巧さだけでなく、
演目への完璧な解釈に基づいた演奏力をも、持ち合わせた凄腕の奏者なのである。それに付け加えて、

本番まで一月を切っても、本番とは丸で関係ない、基礎中の基礎の演目の解釈を巡って、
健の認識を確かめては、逐一その作品を稽古させる。怒髪天を衝いたのが、

健の師匠かつ文楽の人間国宝である笹本銀太夫。齢八十を超えて、益々芸の道を真っ直ぐに歩いている所か、
「遊びは芸の肥やしじゃ」と広言して憚らない。

そんな奔放な師匠の思惑を外した兎一郎がした事を我慢出来る訳がない!健の頭を扇子で叩きに叩きまくる。
理由は「お前は俺の弟子だからや!」 だそうである。世間並の常識なんてものは通用しない、

それが芸の世界である。主役の健にしても一風変わっている。東京から文楽やりたさに、
大阪まで出て来てから十年以上、でもまだぺーぺーの身分なので、

友人からラブ・ホテルの一室を友情特価の激安家賃で借り、
いくら義太夫を唸っても大丈夫な環境下に住み暮らしている。

けれどもこの事は、健がボランティア活動として続けている小学校での義太夫教室で、
一番弟子を自認してくれている、ミラちゃんには絶対の秘密にしてある。

そんな芸道バカ一代な健大夫だからか、兎一郎兄さんも次第に心を開き始め、
自分の芸論を話し出すまでになる。その際語られる、

「ならず者」と「色気」についての考察は一読の価値ありです。なるほどなぁ、と思いました。
しかし、健の「色」となるオカダマチは大夫の目の前に、唐突に道を開いて、

あれよあれよと言う間に、健は飲み込まれてしまいます。
が、カタカナだったマチさんとの間柄が真智さんに変わる頃、

健の大夫としての芸も飛躍的に向上していきます。文楽の有名な演目や内容も知る事が出来るし、
自分なりの語りや解釈を探して奮闘する健の姿から、読んでいると直接生で文楽を聴いてみたくなりました。

◎過去書評にも気軽にコメント下さいませ。一冊の本について話が交わせる事を嬉しく思います◎

にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ読んで気に入って下さったら応援宜しくお願い致します!励みにして書き続けます。

【SNS 本カフェについて】親愛なる皆様へ
「本カフェ」は、本好きさんが集まるSNS読了本、お譲りします!もOPEN!!!
↑ご希望の方は『新規登録』をクリックし会員登録を行なって下さい。

テーマ : オススメ本
ジャンル : 小説・文学

【私が語りはじめた彼は】 三浦しをん

私が語りはじめた彼は (新潮文庫 み 34-5)私が語りはじめた彼は (新潮文庫 み 34-5)
(2007/07)
三浦 しをん

商品詳細を見る


ほぼ日刊イトイ新聞の中で名作【かもめ食堂】の監督荻上直子さんが奨めて居たので
興味を持ち手に取った一冊。心底驚いた!!。こんな小説の書き方もあるんだなぁ、と。

古代中国史の研究者村川教授=【彼】。欲望の赴くままに生きた【彼】の事が
6つの短編(ミステリあり、心理小説あり)の中で語られて行く。
過去から現在に至るまで【彼】と関わりのあった登場人物の間の愛憎が複雑に絡みあう。

が、結局の所。最後まで【彼】の輪郭はハッキリと語られ尽くす事はないまま。
読んでいて口に広がるのも苦味だったり、切なさを含んだ酸味だったりで、
決して口当たりが優しい訳ではない。にも関わらず実に病み付きになる文章だ。

読了直後感じたのは。敢えて読者が各自【彼】をイメージしやすいような
ヒントや隙を残したまま書き終えているのではないか、という事。
だとすれば、恐るべし三浦しをん!!。そう感じる程に一つ、一つの話が
素晴らしい完成度を持っている。

個人的には突然父親を喪失し混乱していた息子が、【彼】の新しい家庭を訪問した後、
父親と訣別し、再生していく様子が描かれている【予言】が強く印象に残った。
人が愛について思う時の気持ちの奥底を見詰め、的確な文章で書き記す事の出来る
三浦さんの眼力。実に凄まじい小説です。

◎過去書評にも気軽にコメント下さいませ。一冊の本について話が交わせる事を嬉しく思います◎

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ 読んで気に入って頂けたら応援宜しくお願い致します!励みにして書き続けます。

テーマ : オススメ本
ジャンル : 小説・文学

SNS「本カフェ」参加中!

ランキングに参加しています!

にほんブログ村 小説ブログ エッセイスト志望へ

プロフィール

花房雨

Author:花房雨
藤長聖子です。

皆様、お友達になって下さいね。お声かけてくれたら嬉しいです。
初めてこのブログを読まれる方は、こちらから読まれてくださいね。

【ラブ&シェアについて】親愛なる皆様へ

【藤長聖子のプロフィール】

≪O型・おひつじ座≫≪1979・3・26生まれ≫≪持病・バセドウ氏病≫

≪好きな人たち↓≫

作家:よしもとばなな・吉本隆明・田口ランディ・西原理恵子・角田光代・山崎ナオコーラ 音楽:THE BLUE HEARTS・大貫妙子・松任谷由実・池田綾子・S.E.N.S 画家:デナリ・ダリ・シャガール・バスキア 映画:アマデウス・サイダーハウス・ルール・ハリーとトント・めがね・ビリー・ワイルダー 落語:立川談春

福岡県在住・紅茶と猫と読書・イラスト描くこと・文章・詩を書くのが好きです☆

◎このブログ・私たちは著作権を放棄しておりません◎

イラスト等を使用されたい場合はメールにてご連絡下さいませ♪

love_heartgraffiti★yahoo.co.jp ★を@に変えてご連絡下さい。

※あきらかに当ブログと関係のないと思われるコメント・TBや『これはひどいなぁ』と行き過ぎを感じさせるコメント・TBは削除させて頂く場合があります。ご了承下さいませ。

メールお待ちしています☆

名前:
メール:
件名:
本文:

HEARTGRAFFITIのすべて

ご訪問ありがとう!

☆検索☆

ジーナフウガの一冊入魂レビュー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。