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【東と西 1】 いしいしんじ、西加奈子

東と西 1東と西 1
(2009/12/01)
いしい しんじ、西 加奈子 他

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表紙に書いてあるキャッチ・コピー『日本じゅうを言葉の力で縦横無尽に飛んでいく新しい小説集。』
『日本には、まだ小説がある。』と言う何とも言えない、力強さに惹かれ手に取った一冊。

東西6名、実力作家の手による書き下ろし中編小説集。いしいしんじ作品【T】
とにかく、もの凄い破壊力を持った文体を直球ど真ん中で、ズシンズシン放ってくる。

読んでいて、ひたすら圧倒されまくりだ。例えば…。
『Tがいなくなった。そんでまた回転してあらわれた。(中略)なんでこんなネバネバすんだろうな。』

と来られたら、こちらは平身低頭のまま、言葉を浴びるしかないではないか!?
信州松本で育った『池田』という苗字の男の数奇な成長ぶりが語られる前半、そして、

松本に居る時に身に付けた、土方仕事を通じ就職した大阪樟葉(くずは)で
土着的な生活を過ごす穏やかな日々が描かれた中盤。だが、物語後半、文字通り池田の身の上に

奇想天外な事態が起こる!是非とも、読んで体感して欲しいシュールな世界だ。
西加奈子作品【猿に会う】中学生から短大まで一緒で、卒業してからも変わらず

仲良しな実家暮らしの関西人女子三人組の日々を、淡々とした筆致で切り取って見せてくれる。
なるほどなぁ、と思ったのが、スパゲッティが食べたいと言った女の子に、別の女の子が、

『今時はパスタって言うんやで』と教え諭すシーン。男子では知り得ない真実味を覚えた。
それにしても、この作者は、何気なさ過ぎて見落としてしまいがちな、

日常にほんのすこしだけドラマ性を与えているはずのエッセンスを丁寧に拾い上げ、
物語に抑揚を付けるのが巧い人だなと感じた。栗田有起作品【極楽】

河童のQが長い長い旅路の果てに行き着いた極楽とは一体、どのような場所なのか?
独特のブラックユーモアが散りばめられた快作です。お次は、この本の装丁担当をしている

池田進吾さんの初の作品【赤、青、王子】装丁をされてるだけあって色を表現する手際の良さが素晴らしい。
赤いインクに、青いインクを練る仕事。まだまだ世の中には奥深い職業の世界が広がっているようだ。

藤谷治作品、これが出色の素晴らしさ。花魁清鶴と酒問屋の若旦那進兵衛の恋模様
【すみだ川】はまるで古典落語の人情噺に触れているようで、ちょっとグッと来る物語でした。

この独自の内容世界を持つ作品集もいよいよラスト。森絵都作品【東の果つるところ】
日本人が歴史を通じて守り抜いて来た『家』と『家族』その家が、家族が守って来たものが、

狂信的な左右対称のみ良しとする名付けの歴史だとしたら、あなた一体どうしますか?
非現実的な現実が迫り来る筋書き。冷や汗をかきつつ読み切りました。

それにしても読書筋力を鍛えられる良い企画のシリーズが読めたと満足しています。
是非あなたも体験されてみませんか?

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【麦ふみクーツェ】 いしいしんじ

麦ふみクーツェ (新潮文庫)麦ふみクーツェ (新潮文庫)
(2005/07)
いしい しんじ

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いしいしんじさんの書く物語りが好きだ。これぞ人生。これこそ、まさしく世界。
そういった悲喜こもごもが刻名に記してあるから。最終的に、この世界って奴も満更悪くはないんじゃあないか、

そう思えるのだ。『ねこ』という名前で呼ばれている少年が主人公の話には、
終始音楽がテンポ良くリズムを刻みながら流れて行く。トン・タタン・トン。

ねこ少年の耳の中には麦をふむクーツェの不思議な足音と、詩のように語りかけてくる言葉とが聞こえている。
頭の中には黄色い大地も見えている。少年は、学校の誰よりも、背丈がひょろり大きく、

その代わり生まれつき心臓が弱い。家族は、彼にねこの鳴き声を出すよう仕込んだ吹奏楽の王様、
打楽器奏者の祖父と、ねこ少年の学校の教師をする傍らで、数学の論文に打ち込む父との二人だ。

一家が港町に越して来た所から物語りは始まる。ねこ少年がはじめてクーツェにあったのは小学校に入ってすぐ。
真夏のむしあつい晩。とん、たたん、とん。音は光と一緒に窓の方から真っ直ぐにやって来た。少年のうちの玄関

先に、へんてこな身なりの人がいて足元の土を踏んでいる。幅広い麦わら帽子、シャツ、ぶかぶかのズボン、
そのどれもが土とおんなじ黄色。ただし靴だけが違う。やたら大きくて横幅のあるその革靴だけは

裏返したように黒い。それから、少年と麦ふみクーツェ、二人だけの幻想的な交流が始まる。
のちに街をおそった災難、ねこにスクラップブックを託す事となる用務員さんの事故。

吹奏楽に関わりながら様々な人生の機微を学んでいくねこ少年。そして彼は中学を卒業し、
故郷の街を離れ音楽の専門学校へ入学する事となる。が、凝り固まった机上の空論のような音楽教育と、

彼の風体を嘲笑う学校に、ねこ少年は早々とサボタージュを決め込んでしまう。
けれど人生、そうそう悪い流ればかり来ない。時計だらけの街の中でも部屋から時計を外し、

代わりに部屋中油絵で埋め尽くす煮込み料理が絶品なおばさんや、
何と言っても図書館で出会った盲目のボクサー、ちょうちょのおじさん。

こういった暖かな視線でねこ少年を見守る人々から受け取る心の栄養分が
更に少年を成長させ運命の歯車を回転させていく事となる。故郷の港町に襲い掛かった大掛かりなサギ事件と、

それに伴うねこ少年の父親『ねずみ男』の悲劇的な死。
サギ師とねずみ男の二人を結び付けた国際的な懸賞金付きの論文。

悪行の報いかサギ師も謎の多い死に様を遂げていたので、自然と懸賞金は数学者ねずみ男の遺児である、
少年の懐に転がり込んで来ます。ねこはサギにより楽器を消失した吹奏楽団に、

新しい楽器を購入する様に言いますが、楽団員はねこに、世界的な盲目チェリスト
(ちょうちょおじさんの友人でもある)の所に学びに行くように勧めるのです。

ここら辺の描写、実に読み応えありで胸が熱くなりました。本当に素晴らしい!
チェリストの先生の、一見授業と思えない、けれど、ねこの全身全霊を音楽へと変えていく教え方の魅力。

そしていよいよ長い道程の果て、一人の指揮者として舞台に上るねこ。数奇な人生を送った少年だからこそ、
音楽にも美しさと、味わい深い響きがある。盛大な拍手を贈りたいと思います。

そうそう、最後の最期にクーツェの謎が明らかになりますが、
この種明かしも良いですよ。トン・タタン・トン。

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【白の鳥と黒の鳥】 いしいしんじ ~短距離走者の瞬発力の爆発と解放~

白の鳥と黒の鳥 (角川文庫)白の鳥と黒の鳥 (角川文庫)
(2008/11/22)
いしい しんじ

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あ、やっぱり!この人の書く物語はパンクだ…。実に物凄まじい!!改めてそう感じたのだった。
思い返して見るに、「いしいしんじ」という人は、

故中島らも氏とのマリファナぷかぷか体験記を上梓したり、
町田康氏と人生を歩いた本を出版したり。伊達や酔狂ではいかない、

規格外の相手を向こうに回してもビクともしないどころか、時には平然と白を切り通していた。
なので、「この人の奥底に流れている怒涛の世界が、静から動へと大爆発をした物語が出たなら、

間違いなくそれは傑作になるに違いない!」 と確信していた。
その待ち続けていた大爆発のエネルギーに溢れた大傑作が本書である。

一篇につき10ページ前後の短編よりも短い鮮烈な掌編小説を19編
ギュギュッと絞ったこの作品集の爆発力は、例えるなら100mスプリントの瞬間的な

野性味の充満したスタートダッシュにも似た雄々しい
エネルギーの解放と言っても過言ではないでしょう!もう一篇、一篇、

紡がれた物語に敬意の念と愛着を覚えずには居られません!!
それでは、早速肝心要の物語の内容について触れて行こうと思います。

人が動物の肉を食べることにより生命を生き長らえさせていることについて、
厳粛で神聖なる描写が光る【肉屋おうむ】。合言葉は一声「ラー!」ゴルフ場にて運命的な出会いを果たし、

恋に落ちたはつかねずみと私の切ない恋の物語「この星でこの場所からいちばん遠いところから来た」
はつかねずみの可憐さに落涙したのです。【しろねずみ】おばあちゃんが亡くなって以来、

時々おじいちゃんおばあちゃんに変身するおじいちゃんから「せみ子」と言う、
かなりシュールな名前で呼ばれている女の子が「いい雨」の日に街を散策する様子を描いた

【せみ子の黄色い傘】いしいさんの創り出す子供の眼光の鋭さは、
何か奈良美智さんの描く子供たちと似ていて仄白く発光している。舞台に文字通り、

全身全霊で臨んだ双子姉妹カラタチとブルーベルの姿を追った、
【カラタチとブルーベル】。ラストの思いもよらない展開こそ、

「人生は舞台だ!」と言う言葉を体現していると思います。川の右岸と左岸に住むホームレス達が
酒やショバを巡って、カラオケによる対抗戦を行う。

敗色の気配が色濃く漂う右岸軍団をたった1人で逆転勝ちへと導いた、
オカマのジェーンの活躍を描く傑作【薄い金髪のジェーン】。

生き延びる為、そこに唄が流れる。時空を遥かに一飛び、上野の立ち飲み屋台で国民的作曲家が語る、
流浪のバンジョー弾き、その名もアラバマ・ジョーの身の上に降る数奇な運命のお話し。

「詩ってもんは、歴史からちぎれた言葉やろ」そう呟く作曲家が、最後に放った、
歴史を超えたギャグが秀逸な【オールド・ブラック・フォスター】男児を2人続けて授かった家に、

更に双子の男児が誕生した。自暴自棄になった父が、双子の名を赤男・青男、なんて名付けたもんだから…。
マザーグースの寓話や、フィンランドの名監督、アキ・カウリスマキの様に、

残酷なる世界の美しさを淡々と物語る事になるのだ。【赤と青の双子】妹の発作を治す為、
魔法のリコーダーなる笛を手にしたぼくに、奇跡は訪れるのか?【魔法のリコーダー】

ニュー・ハーフのマコの仕事明けの紫に充ちた時間帯を描いた【紫の化粧】
マコの純粋なる生き方が胸に沁みます。観光の為に飼い慣らされた人工の紅葉ではなく、

猛々しい気性を持つ、本当の=野生の紅葉による人身被害が相次ぎ、死人すら出た為に、

当局は真の意味での、紅葉狩りを現地の猟師ふたりに依頼した。【紅葉狩り顛末】
こんな突拍子もない発想を、僅か7ページで抜群の物語として纏め上げ切るのが、

物語の魔術師・いしいしんじさんの真骨頂だと思います。現在自分の顔だと認識している、
鏡に写った自分の顔は、果たして本当に自分の顔なのか?【すげ替えられた顔色】

人の心の隙間を突き弱味を暴き立てる。背筋に、ゾゾッと寒いぼが立つ、
極上のショート・ショートです。タクシーの運転手達の哀歌(エレジー)。

職務に忠実であればある分、人間臭い匂いがする【ボウリングピンの立つ所】春と言えば花、
花と言えば桜、それ故に誰にも言えない悩みを抱えた桜花の気持ちを鋭い視点で切り抜いて見せる

【緑春】散々青色への愚痴を言った後に、緑色本来の和やかさを描いたラストが味わい深く絶品です!!
品切れしているヒラメの代わりとして、手にしたのは、活きの良いアオヤギ。荒っぽい、

やくざめいた獣である【わたしの千食一夜~第百二十三回】奇妙な響きを持つ謎の食品、
“こぎゅんぱ\"の味を想像しニヤけました。ある日突然、

鳥の声が人間の言葉に聞こえる様になってしまった、布吉爺さんと鳥たちとの交流を描いた
【白黒の鳥の声】たった一羽布吉爺さんと会話した白黒の鳥は果して如何なる物の象徴なのか?

病に侵された妻メイ子の為にと産まれたてのおっとせいを飼う事にした夫。だったのだが…。
『生き物はすべて、そう生まれついたようにしか生きていかれないのだ』という名言が

ダイナミックな効果を上げている【おっとせいを飼う】喘息持ちの甥っ子に会うために、
滅菌された部屋まで見舞いに行った叔父がそこで見たものとは…【薄桃色の猫たち】。

シュールかつシニカルな薄ら寒さの中にあるなんとも言えない可笑しさが後からじわじわ効いて来ます。
コップ一杯の水道水を最高に美味く飲む方法とは?空に浮かぶ虹の悩み、

自分は本当は幾つの色で構成されているか?世界で最も透明に輝く宝石とは何であるか?
透明なスープを作る為に最も必要な物って?【透明に関する四つの小話】どれも、あっ!と驚く解決法ばかり。

『限りなく天国に近い地上の楽園』住人達は皆、大きな体と大らかな心の持ち主ばかり。
写真家「ねじまわし」と私は絶滅したとされる幻の鳥を追い求めて、この地へやって来た。

【太ったひとばかりが住んでいる村】自分の目に見えるものだけが真実と思い込まされている我々は、
この世のほんとうに美しいものを、知らず知らずの内に見落としているのかも知れないと感じた。

19の物語には、それぞれ人間が生きている証しがくっきりと刻印されています。
物語の世界にのめり込んで、もう一つの現実を握りしめて下さい!

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【雪屋のロッスさん】 いしいしんじ

雪屋のロッスさん (ダ・ヴィンチブックス)雪屋のロッスさん (ダ・ヴィンチブックス)
(2006/02)
いしい しんじ

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いしいしんじさんの紡ぎ出す作品って、昔話や、おとぎ話の様に、人から人へと口伝えで、
これからもずっと届けられて行く物語りになって行くんだろうな、と思う。
寓話の世界って優しく美しい反面、時に、はかなく残酷な一面も存在するけれども。

いしいさんの語り始める『ある所に、○◎さんが住んでいました』からも、
あらゆる良質なメルヘンと同様に、確かに何処か在る所に暮らしている○◎さんの姿形や
日々の営み、残念な出来事も心躍る嬉しいニュースも、丸ごと全部ハッキリと浮かび上がって来る。

この世の中で起きている現象それぞれ1つずつを、決して雑には流さず、
独自の観察力で受け止め受け入れてる作家の姿が頼もしい。
力まず軽やかにユーモアもたっぷりで。
多種多様な仕事や仕事場について描かれた三十のストーリー。

床屋さんや果物屋さん。雪を造る職人さんや、
不思議な感覚で絵筆を走らせ似顔絵を完成させる婆さん。
果ては、宇宙人や、仕事する【物自体】まで登場して来て。作中で語られている通り、
『この世界は、勝者のためにだけうつくしいというわけではない』事を実感出来る本です。

アンデルセンの童話集や、ジム・ジャームッシュ監督、アキ・カウリスマキ監督の作品の
世界観が好きな方にもお勧めします。是非とも、触れて震えて下さい!!

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【東京夜話】 いしいしんじ

最初、【とーきょー いしい あるき】と言うタイトルで発表された、この作品集。
東京の街を舞台にした短編が全部で18篇収められている。

【幻のデビュー作】と言われるだけあって、
いしいさん自身が主人公であろうと思われる毒舌たっぷりの私小説的作品から、
星新一風なショートショート、不条理小説、果ては、鴉の書いた日記まで。

現在の、いしいさんの作風とは若干異なるテイストの物語を楽しむ事が出来る。
頭の中を洗いざらい全部ぶちまけた感じの迫力と覚悟が凄い!

実際この本を発表した後、本格的な小説家活動を開始するまで数年の空白期間があるようで、
中島らも(その辺の問題で対談)のサイン会に、
ふらっと現れた時には「生きとったのかぁ!」と感動されたりしているし。
天性の物語作家いしいしんじは、こうして誕生したんだなぁ。

特に、浅草の老ホームレス【先生】(寺の住職だった人が五十歳を過ぎ、
坊主とコジキは三日やったらやめられんってホンマか?を確かめに家出、それから20年浅草の主。)
との話が秀逸!!笑えて泣ける傑作です、是非どうぞ。


東京夜話 (新潮文庫)東京夜話 (新潮文庫)
(2006/11)
いしい しんじ

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プロフィール

花房雨

Author:花房雨
藤長聖子です。

皆様、お友達になって下さいね。お声かけてくれたら嬉しいです。
初めてこのブログを読まれる方は、こちらから読まれてくださいね。

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【藤長聖子のプロフィール】

≪O型・おひつじ座≫≪1979・3・26生まれ≫≪持病・バセドウ氏病≫

≪好きな人たち↓≫

作家:よしもとばなな・吉本隆明・田口ランディ・西原理恵子・角田光代・山崎ナオコーラ 音楽:THE BLUE HEARTS・大貫妙子・松任谷由実・池田綾子・S.E.N.S 画家:デナリ・ダリ・シャガール・バスキア 映画:アマデウス・サイダーハウス・ルール・ハリーとトント・めがね・ビリー・ワイルダー 落語:立川談春

福岡県在住・紅茶と猫と読書・イラスト描くこと・文章・詩を書くのが好きです☆

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