![]() | 平台がおまちかね (創元クライム・クラブ) (2008/06) 大崎 梢 商品詳細を見る |
この単行本、装丁からして洒落ている。平台がおまちかね、と書かれたポップ、
山積みにされた書籍の帯には『編集以外の出版社の仕事、知っていますか?』これには強く興味を惹かれた。
中堅出版社・明林書房の新人営業部員の井辻くんが、出版業界で働く日常の中で起きる、
様々な謎めいた出来事に、体当たりで挑む。その様子を描いた短編が五つ収録されている。
各話は緩やかに連なっていて、ミステリ部分は勿論、謎とされる出来事を解決する内に主人公が
成長していくのが分かるのが良いと感じた。更に、彼の普通でない、本との接し方の描写が非常に面白い!
曰く、『一冊の本が気に入ると、その世界にのめりこんでしまうんですよ』だそうだ。
のめり込みかたも尋常でない。『心ゆくまで物語世界に浸り、再読し、絵を描き、
舞台となる建物の図面を起こし、ジオラマまで作ってしまいます』更に、
彼は耽溺する本を『魂本』と読んでいるそうで…。本好きならば、誰でも程度や深度の違いこそあれ、
自分なりの『魂本』に行き着こうとするものではないか、そう思うだけに、
井辻くんの本との向き合う姿勢には見習いたい点が多かった。
特に『絵本の神さま』という作品に込められた人間の運命の不思議を優しく描き出している点に惹かれると共に、
感動して泣きそうに…。地域の皆に愛されていた小さな書店が突然の閉店を決めた際に、
実は隠されたエピソードがあってという話なのだが、『そうだよなあ、人間の運命に好不調はあっても、
捨てたもんじゃない、満更人生も。』と胸に沁みた。他にも、若手の井辻くんを『ひつじくん』と
呼ぶ他社の営業真柴を初めとした、個性的過ぎる、出版社営業マンたちの付かず離れずな距離感が
ユーモアたっぷりに描かれていたり、筆者の別作品の登場人物がチラリと顔を覗かせたりと、
巧妙な仕掛けが至る所に潜んでいて、終始飽きることなく楽しませてもらった。
このシリーズ、続編も是非とも読もうと思う。読むと元気になれる素晴らしい本です!!
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